がじぇぶ GADGETY BLOG

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急速充電器やモバイルバッテリーで必ず目にするAnkerって何だ、中国企業って知ってた?Anker成功の秘密

 Amazonで買い物をするといつも出てくる『Anker』、レビューも賞賛の嵐で毎度ベストセラーの一流企業。CEOは元Googleの従業員だとか、米Amazonで商売を始めたってこと以外に何か知ってます?

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CEOの陽萌氏は中国で『80後』と呼ばれる『海亀族』

 こちらがAnkerのCEO陽萌(Meng Yang)さんのご尊顔です。素敵な笑顔ですね。1999年に北京大学に入学したとありますから、そのとき飛び級なしの18歳だと考えると今は33歳、34歳でしょうか。若いCEOにも驚きですが、世界の市場を席巻しているその実力に一番驚かされます。当初「Anker?そんなの知らねーよ。」と思っていましたが、今や知らない人はいないぐらいの存在感です。2011年7月に本格的に中国に本社を構えてスタートを切ったのだから、始めた当初は知らない人が多いのも無理はありません。日本では2009年創業となっていますが、当時副業としてやっていたもので、中国では『Googleという大企業を捨てて、全ての財を投げ捨てて2011年ゼロから母国で企業した』というスタンスでやっています。日本だと『凄腕の元Google技術者が確かな技術とGoogleでのノウハウを活かしてスピーディな独自開発を続ける安心安全の企業』といったところでしょうか。

 国によって消費者のニーズや好みが分かれることはCEOは充分理解しており、例えば中国国内だと白いカラーが好まれ25W5ポートの安価な商品が売れるが、米国では黒が好まれ60W6ポートの高性能な商品が売れるなど地域によって戦略を変えるべきだと考えているようです。上記も中国では『母国愛』日本では『信頼と技術』を売りにし、そのマーケティングの一端を知ることができます。日本においては『中国』というワードを隠して『元Googleという言葉が独り歩きしている印象さえあります。

 起業の始まりを調べると実際は『すべてゼロから』というわけでなく、日本でいうように2009年からコツコツ独立のための準備をしていて、軌道に乗ったところで中国に帰国し、元Google中国のCEOである趙東平さんを経営に迎え入れたり、準備は万端でした。『財を投げ捨て』という表現も確かに当時200万元(約3800万円)近い年収をもらっていたGoogleを退社しましたが、2012年には1億元(約19億円)稼ぎ出してます。まぁ、物は言い様です。

(※AukeyのebayやAmazonの成功があるので2009年以前から計画があったのかもしれません)

 2010年3月に中国撤退を表明したGoogle Chinaの運営トップである趙東平(Dongping Zhao)とタッグを組んで2011年7月から中国の湖南省で会社を始めたというところでもすでにドラマですね。湖南省というのは毛沢東の出生地としても有名ですし、ちょっときな臭い感じも受けます。起業当時の5名のコアメンバーの内4名が元Google社員です。2009年の前身会社のメンバーがそのままコアメンバーに残っていると予想されますが、邪推して、中国撤退前から水面下でヘッドハンティングをしていたのか、撤退を知って引抜を本格的に始めたのかそのあたりは不明ですが、結果として優秀なGoogle社員を会社の中心において大成功を収めています。

80後って何?

 中国にも日本の『団塊世代』や『ゆとり世代』的な考えがあります。90年代生まれの世代のことを『90後』と呼び、80年代生まれのことを『80後』と呼んで区別しています。『90後』というのが大体日本のゆとり世代のような見方をされています。一人っ子で、甘やかされて、ネットばかりに没頭して社会性がない。色々共通点が見られます

90後 - Wikipedia

 対して80後というのは一人っ子政策の施行後生まれた初めての世代であり元祖ワガママの世代として揶揄されてきました。まぁ、のちにその人たちが下の世代を90後と呼び出し、いつの時代も『最近の若いやつらときたら』というのは繰り返される運命にあるようです。但し、80後というのは元祖ワガママ世代でもありますが、文革後初めてまともな高等教育を受けた世代でもあります。

80後 - Wikipedia

 一人っ子で大事にされ、やりたいことを何でもやらせてもらえた世代です。遊びたければ遊び、結婚したくなったら結婚し、勉強がしたければ留学させてあげるという世代なわけです(今も一人っ子はやりたい放題ですが、その元祖の世代ということ)。

 このような文革後の激動の中国で育った陽萌(Meng Yang)CEOの略歴は:

1999年 北京大学計算機(コンピューター)学科へ入学、Computer Scienceの学士号を取得

2003年 米国The University of Texas at Austinへ留学、Data Mining/Machine Learningの修士号を取得

2006年 Google入社 Senior Software Engineerとして働く

2007年 Google Founder's Awardを受賞

2009年 数名のGoogle社員と副業として会社の前身を築く

2010年 Google退社

2011年7月 本社を中国湖南省長沙に設け、Ankerを設立

 当時大学への進学率が5%に満たない中国で大学に行けたというだけで、エリートなのですが、更にその中でも国内はもとよりアジアでも屈指の名門北京大学に入学できる実力からして凡人ではありません。Googleに入れるのはこういう人間だということですね。

 ちなみにアマゾンジャパンに進出したのは2012年です。更にいうと2012年にはAukeyもいる中国のシリコンバレー深圳(シンセン)にAnkerグループの研究開発センターの拠点を設定しています。そして同年にはほぼ自社開発をしたAnker 4500mAhの薄型ポータブルバッテリーを市場に送り出し、日本だけでなくスペイン、カナダのAmazonへも進出しています。躍動の年ですね。

 しかし、深圳はやっぱりガジェット好きの聖地、一度は巡礼しなければならない場所ですね。

・ドローンで有名なDJI

・日本のゲーム業界にも多大な影響を与えている巨大なIT起業テンセント

・Ankerの競合Aukey

・中国のスマホの質を一気に押し上げたOnePlus

・日本のキャリアでも採用のHuawei

・愛してやまないBluetoothゲームパッドを夜に出す8BitDo

文字通り枚挙に暇がないほどのトップ企業を抱えるとんでもない世界の工場です。

海亀族って何?

 サッカー日本代表で本田選手や、香川選手がよく『帰国組』なんて一纏めにされますが、まさにその考え方です。帰国子女とは違って、陽萌CEOのように海外に留学や就職で出て行って、国外を見てきた人が『海外から帰ってくる』のを『海亀』と呼びます。『海帰』と『海亀』の発音が中国語では全く同じなのと、生まれた砂浜に戻ってきて卵を産む海亀の性質を表した中々巧みな言葉です。

 実は北京大学創始者とか李登輝さんだとか、蒋介石等々、昔は日本に留学して中国に帰って革新的なことを起こしたっていう人はたくさんいます。その当時は『海亀族』とは呼びませんでしたが、母国への絶対忠誠をもって留学し、その技術を国の発展に活かそうという心構えは一緒です。日本の黒船来航以降の明治維新のような感じです。

 しかし、昔は数えるほどしかいなかった海外組も今では毎年100万人を超えるぐらいいます。加えて『海亀族』といっても日本に語学留学に来て実は吉野屋でアルバイトしてるだけだとか、そんな人がたくさんいるので例え海外組でも就職できずに引きこもりになる人もたくさんいるようです。

Ankerのマーケティングは典型的な『借船出海』

 Ankerの洗練されたデザインは中国企業というイメージを抱きません。それは、常に海外消費者を意識して、厳しいユーザーの評価に応えるべく迅速なサポート体制を整え充実のアフターサービスとクオリティの改善を実践しているからです。

 でも、Ankerの膨大な生産ロットを捌くために活躍しているのは中国の人海戦術ではありません。日本にも『人の褌で相撲を取る』なんて言葉がありますが、中国には

『借船出海』という言葉があります。日本語のことわざ風に言い換えると『他人の船を借りて海にでる』といったところです。

 CEO曰く「国内企業の海外貿易はほとんどがB2Bで駄目アル。あれじゃ儲けが全部外国に飛んでっちゃうアルなー。ワタシのところはもっと賢くやるアル。」ということでやったのが、Amazonやebayでのオンライン専門販売です。

 これなら途中に仲介業者を挟んで莫大な費用を取られることもないし、Amazonやebayが時間をかけて確立してきた膨大な世界市場(販売網)と販売における信頼感をそのまま利用することができると睨んだんです。

 これは仲介を失くすという利点もありますが、直接ユーザーの声が聞けるという大きなメリットも産みました。一体何が不満なのか、どこを改良すればいいのか、米国はコストより質だ、中国は質よりも価格で勝負だ、日本のユーザーは質や信頼を要求してくる。iPadを二台充電する人もいるぞ、充電口が1個じゃ足りない、2個ほしい、いや5個はいる。なんで2Aの出力がいるのに1Aしかでないんだよ。自動で出力調整してくれよ。こんな流れでどんどん改良を加えて今ではベストセラーを連発です。

 これは消費者にもメリットをもたらしました。量販店で購入すると、メーカーとの間に必ず量販店が入ります。故障などの不具合がおきた場合にうまく伝わっていなかったり、メーカー修理までの手続きや、完了までの時間が遅くなるなどデメリットが生じますが、Amazon等のレビューを絶えずチェックしているAnkerはさっとレビューに返信を残し、内のサポートに連絡してくれなんてことをよく書いています。返金、交換迅速に受け付けるのでという言葉通り、すぐに対応してくれます。

 このAnkerのやり方は別に真新しいことではなく、典型的な海外市場戦略です。CEO曰く「どんどん真似しちゃっていいアルよ。」とのことですが、実際にここまでのクオリティーとアフターサービスを提供できる企業が幾つあるでしょうか。簡単ではないでしょうね。

 Canonが韓国での販売のためにLGの商社にマル投げして、販売網を確立したのはいいですが、まるで韓国企業かのような宣伝をしたもんだから、せっかくの日本品質が目立たないし、韓国人からはLGがキャノンを買収したなんて言われたり散々でした。これで懲りたかと思ったら、今度は現地法人を作ってLG商社との契約を打ち切り自分達で販売するなんてことをしています。Ankerとは真逆の方向ですね。

 全国展開や、海外展開をするのに今や東京やニューヨークにでる必要はなく、中国の田舎にオフィスを構えれば世界と戦えるということを教えてくれたのがAnkerです。わずか30平米だったオフィスは200平米から900平米へ、社員もわずか数人でしたが70名、120名、200名と数を増やしています。

湖南海翼電子商務有限公司って知ってる?

 湖南海翼電子商務有限公司って聞いたことありますか?これがAnkerブランドを運用している会社です。

湖南海翼电子商务有限公司 

from:http://oceanwing.hirede.com/CareerSite/EmployerBasic

 AnkerのCEOであるMeng Yangさんは英名Steven Yangさんと書かれた左の方です。元Google Chinaの趙東平さんは中央にいます。

 中国の製品はクオリティーが低い、日本の製品は壊れないなんてステレオタイプなことを考える人はまだまだいます。でも、中国のエリート集団が作るクオリティーの高さをすでに皆さんはご存知だと思うし、ダイソーで売られる製品のクオリティーや『安物買いの銭失い』的な日本製品を充分体験したことがあるはずです。オジサンはどこの国のどのブランドであってもお客を大事にするメーカーは応援したいと思ってます。商品が良ければ尚更応援しちゃいます。

2018年会社名称を変更

2018年10月追記:この記事を書いてから早3年。本当にとんでもなく大きく成長してしまったAnkerは2018年1月に「湖南海翼电子商务股份有限公司」という中国名から、「安克创新科技股份有限公司」という名称に変わったようです。またそれに伴い、英名も「Hunan Oceanwing E-commerce Co.,Ltd」から「Anker Innovations Technology Coo.,Ltd」という日本でも聞き慣れた名称に正式に変わっています。マニアックな方には中国語の略称は「海翼股份」から「安克创新」に変わったこともお伝えしておきます。

先の写真で会社の創設者とされていた右側二人は新名称のウェブサイトでは姿を消していますが、何かあったのでしょうか。新たに張山峰さんの写真が登場しています。こちらも元Google関係者のようです。

以前の会社の紹介写真と比べると皆さんおしゃれなスーツを着こなして、プロフェッショナルな加工もされていて、Ankerの会社としての成長と中国のセンス的な目覚ましい発展具合がよくわかります。Steven Yang CEOの素敵な笑顔はそのままですね、めちゃくちゃ優しそう!高さんいい年のとり方してるぅ!

 

【追記】家電事業に参入し、勢いに乗るAnker

「安かろう悪かろう」ではないということを、着実に証明してきている感のあるAnkerですが、2016年6月からは家電事業への参入も始めました。お掃除ロボットはその価格で発売前から話題になっていましたが、レビューでの評価も概ね好評のようです。

 米国ではやはり黒が好まれるようで、カラーはブラックなのですが日本は「白物家電」と呼ばれるからか、どれもホワイトが使われており、米国カラーとは若干違います。個人的にはブラックの方が好きなので、カラーも増えてくると嬉しいです。

コードレスサイクロン掃除機、加湿器等もラインナップに入っていますが、個人的に一番欲しいのは被災地でも活躍した「Anker Powerhouse」です。

これがあれば緊急時はもちろんのこと、キャンプでスピーカーをつなげたり、プロジェクターを野外に持ち出したりということがもっと容易にできるはず。価格で太刀打ちできない分、日本のメーカーにはこういう独自路線でもっと活路を見出してほしいなと期待しているのですが、中国メーカーがこの路線も奪ってしまうとなると、先が怖いですね。